保育士不足は大きな社会問題!その原因と解決策とは?

保育士不足は大きな社会問題!その原因と解決策とは?

日本で待機児童問題が顕在化し、深刻な社会問題となっています。少子化が叫ばれているにもかかわらず、なぜ待機児童問題が起きるのでしょうか。これには、保育士不足と深い関係があります。ここでは、保育士不足の原因や、国・自治体・現場などが取るべき解決策について、さまざまな視点から検証していきます。

目次

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保育士不足の現状とは?

保育士不足の現状とは?

保育士が足りないと言われており、大きな社会問題とされていますが、実際にはどのぐらい足りないのでしょうか。
まず保育士不足の現状から見ていきましょう。

2021年4月時点での全国有効求人倍率は2.04倍

厚生労働省が発表した「職業安定業務統計」によると、令和3年4月時点における保育士の有効求人倍率は、2.04倍となっています。
全職種における平均の有効求人倍率が1.04倍ですので、この数値と比べるととても高いことが分かります。

都道府県別に見ると、栃木県の3.34倍や大阪府の3.33倍を始め、2.5倍を超えている都県として茨城県・埼玉県・東京都・福井県・静岡県・広島県・沖縄県などがあげられます。

全国有効求人倍率の2.04倍は、職を求めている人1人に対して、企業からの求人が2件来ていることを意味します。
つまり、有効求人倍率の数値が高いほど、人手不足という現状が分かるのです。
有効求人倍率の数値は、失業率などと合わせて、雇用情勢を表す指標とされています。

待機児童の増加にもつながっている

保育士不足と大きく関係している問題が「待機児童問題」です。
待機児童とは、保育園に入所を希望しても入所できない子どもたちのことを言います。

令和2年4月1日現在で、待機児童の数が1,000人を超えているのは、埼玉県・東京都・兵庫県・福岡県・沖縄県の5都県となっています。
出典:厚生労働省「保育所等関連状況取りまとめ(令和2年4月1日)」

いずれの都県も、平成31年の調査と比べると待機児童数は減っていますが、それでも1,000人を超える児童が保育園に入れない状態が続いています。

さらに、待機児童の定義が自治体ごとに異なるため、発表されている待機児童よりも、実際の待機児童の数は、この数値より多い可能性もあります。
待機児童が多いのは都市部が中心となっていますが、沖縄県が含まれるのは、保育園の整備が遅れていたり、保育士が不足していたりという理由が関係しているようです。

また、年齢区分別の待機児童数を見ると、0歳児から2歳児の低年齢児が、全体の87.1%を占めています。
そのうち、1歳児と2歳児が77.2%と、最も多い割合です。
保育園があっても、保育士が不足していると、園児を受け入れることはできません。
保育士不足が待機児童の増加につながっているのは、このためなのです。

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保育士が不足している原因とは?

保育士が不足している原因とは?

保育士資格を持っていても、実際に資格を生かせる職場への就職を希望する人は、全体のおよそ半数となっています。
原因には、どのようなものがあるのでしょうか。

給与が十分ではない

保育士不足を解消するために解決すべき問題点のひとつが、賃金です。
保育士は、他の職種と比べて賃金が低いため、厚生労働省の調査においても保育士としての就職を希望しない理由の上位にあがっています。
全職種の平均給与に比べ、保育士の給与はかなり低く、保育士不足の原因に直結していると言われています。

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休日の自由度が少ない

保育士は人手不足である上に、園によっては年中行事の準備に多くの時間を費やすことがあります。
そのため、有給休暇を取りたくても取れない保育園が多く見られます
シフトの希望を出しづらいことも多く、取りたい日に休日が取れないケースも増えているのです。

さらに、休日出勤をする園も多く、休日の自由度はかなり低いと言わざるを得ないでしょう。
休日を十分楽しめないと、仕事へのモチベーションは下がる一方となってしまいます。

長時間労働になりがちである

保育士がこなす業務量は膨大であり、子どもたちと一緒に過ごす保育時間内では、業務が終わらないケースが増えています
そのため、サービス残業をしたり仕事を家に持ち帰ったりすることで、結果として長時間労働になってしまいます。

保育士の仕事は手書きが中心であり、書類作成や報告業務などがシステム化されていない部分が多いため、業務量をなかなか減らすことができません。
サービス残業や持ち帰り仕事は給料には反映されないため、保育士の負担は増える一方になり、離職につながる恐れもあります。

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命を預かるという責任が重い

保育園は、多くの子どもたちが集団生活を行う場所です。
大事な子どもの命を預かるため、責任の重さは計り知れません。
このプレッシャーに耐えられず保育士が続けられなくなる場合もあります。
子どもがケガをしてしまったり、万が一事故が起こったりすると、さらに精神的な負担は大きくなってしまいます。

また、子どもを預ける保護者から「保育士に預けるのだから大丈夫」などというような声をかけられると、さらに重いプレッシャーを感じてしまうのです。

人間関係に悩むことが多い

男性保育士が増えているものの、保育士は現在でも女性の割合が高い職業です。
そのため、人間関係の難しさも保育士不足の理由にあがっています。
キャリアの違いのみならず、仕事の考え方や保育方針に対する考え方などの違いも、人間関係に関わってきます。

保育士同士の人間関係に加え、保護者とのコミュニケーションも、保育士にとっての悩みの種になることがあります。
保育士と保護者は、毎日の送迎や連絡帳でのやり取り・行事などでの協力など、さまざまな場面で接する機会が多い関係です。
子どものことを考えるからこそ、意見がぶつかってしまうこともあるでしょう。
そのような時の対処法に悩む保育士も多いようです。

認可保育園での配置基準が厳格である

配置基準とは、保育士1人に対し、何才児の子どもを何人まで保育しても良いかという数値を定めた基準です。
認可保育園においては、国が定めた配置基準を満たしていることが原則です。
そのため、配置基準が満たされていないと、認可保育園としての運営ができなくなります。
国の配置基準は次のとおりです。

0歳児 保育士1人に3人
1・2歳児 保育士1人に6人
3歳児 保育士1人に20人
4歳児以上 保育士1人に30人 
(ただし、保育士は常時、最低2名以上配置すること)

このように、年齢が大きくなるほど自分でやれることが増えてくるので、保育士1人が見られる園児の数が多くなります

国の基準のほかに、各自治体で独自の配置基準を設定しているところもあります
国の基準と同様か、もしくは子どもの人数を減らして、ゆとりのある保育を目指す自治体も見られます。

この配置基準は、正式には「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」と言います。
児童福祉法に基づき、昭和23年に設定されたもので、現在の保育園事情とはかけ離れた内容になっています。
保育士不足が深刻であることから、2016年に配置基準の緩和が行われました。
内容は次のとおりです。

・看護師、保健師、准看護師も、保育士としてカウント可能
・朝夕の時間帯は、保育士2人のうち1人は子育て支援員で代替え可能
・幼稚園教諭、小学校教諭、養護教諭の免許保持者を、保育士として活用可能
・自治体の研修を受けた子育て支援員の活用

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潜在保育士が増えている

潜在保育士とは、保育士の資格を持っているが保育士として働いていない人をさします。
保育士としての勤務経験がある人だけではなく、資格を持っていても一度も保育士の仕事をしていない人も含まれます。

潜在保育士の数は、全国でおよそ95万人にものぼるという調査結果が出ています。
潜在保育士が増えた理由には、先ほど紹介した給与面や人間関係、条件に合う求人がない、出産のため退職した保育士が子育てと両立できる働き方ができないなどといったものがあげられます。

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保育士不足を解決するため現場が取るべき対策とは?

保育士不足を解決するため現場が取るべき対策とは?

保育士不足を解消するには、現場で適切な対策を取ることが重要です。
どのような対策法が考えられるのでしょうか。

働きやすい職場の雰囲気をつくる

潜在保育士の多くは、先ほど解説した課題が解決すれば、現場に復帰したいと考えていることが分かっています。
労働条件や職場環境を改善することで保育士としてのキャリアアップを目指せるようになります。

具体的には、勤務時間の見直し・休日出勤の改善・保育士同士のコミュニケーションの強化などが効果的でしょう。

電子媒体を導入する

保育士の業務内容を見直す上で見逃せないのが、電子媒体(ICT)の導入です。
厚生労働省も、電子媒体導入の必要性を提言しています。

電子媒体を導入することで、労務管理の簡略化・登降園時間の記録、園児情報の管理、給与計算など、事務作業の大幅な負担軽減につなげられます。
この時間を、子どもたちのサポートやふれあいの時間に充てることができるのです。

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国や自治体が取っている保育士不足対策とは?

国や自治体が取っている保育士不足対策とは?

国や自治体も、保育士不足の課題を解決すべく、対策を取っています。

「新子育て安心プラン」

国は「新子育て安心プラン」として、令和3年度から令和6年度末までの4年間で、およそ14万人分の保育の受け皿を整備する取り組みを進めています。
地域の特性に応じた支援や、保育士の確保、地域の子育て資源の活用などを掲げています。

その中でも、保育士の確保に関しては、保育補助者の補助要件撤廃や、短時間勤務の保育士の活動促進などが盛り込まれています。
ただし、短時間勤務の保育士の活動内容については、現場や保護者から反対意見も出ているため、現場に即した対応が求められます。

賃金の改善

保育士の給料を上げるために、「キャリアアップ研修」という研修が行われています。
都道府県で提供する「県実施研修」と、外部委託で行われる「指定研修」の2種類があります。

研修の受講後新役職に就くと、給料にプラスして手当が支払われます
経験年数が3年以上の保育士から研修に参加できますので、若手のキャリアアップを狙う効果も期待できます。
自治体によっては独自の政策で手当の上乗せなどを行い保育士の待遇改善を進めているところもあります。

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保育士試験の実施回数の変更

平成26年度までは、保育士試験は年1回のみの実施でした。
しかし、平成27年度から、保育士の確保を目的として「地域限定保育士試験」が実施されるようになりました。
さらに、平成28年度からは、通常の保育士試験も、地域限定保育士試験と合わせて年2回行われるようになりました。

地域限定保育士は、試験に合格した地域でのみ働くことができる資格ですが、4年目以降であれば全国で働けるようになります

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まとめ

保育士不足を解消するために、国や自治体をあげてさまざまな施策が行われています。
待遇が改善された上で、保育士という職業に誇りを持つ人が増えていけば、保育士不足の解消につながっていくでしょう。

また、これから保育士資格の取得に向けて勉強を始めるのなら、資格のキャリカレをぜひご活用ください。
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万が一不合格の場合、受講料が全額返金される制度もあるので安心です。

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