かかりつけ薬剤師・薬局とは?なるには?仕事内容や通常の薬剤師との違い

かかりつけ薬剤師・薬局とは?なるには?仕事内容や通常の薬剤師との違い

かかりつけ薬剤師とは?薬局とは?なるにはどうする?など、かかりつけ薬剤師についてわかりやすく解説します。さらにここでは、かかりつけ薬剤師になるメリット・デメリット、仕事内容、指導料まで詳しくご紹介しています。

目次

かかりつけ薬剤師・薬局とは?通常の薬剤師との違い

かかりつけ薬剤師・薬局とは、従来の薬局・薬剤師の役割を改善し診療報酬を設定するために2016年4月からスタートした制度のことです。
生まれた背景としては「薬局の乱立によって患者の薬の一元管理が難しくなったこと」「調剤技術料や薬剤料が国民医療費を圧迫したこと」などが挙げられます。

まず「かかりつけ薬局」とは患者専用の薬局のことです。
薬局側が薬の管理などを行う患者を決めるのではなく、患者側が薬を管理してもらう薬局を決定します。

一方、「かかりつけ薬剤師」とは継続的に一人の患者の薬の処方や管理を行う薬剤師のことを言います。
かかりつけ薬剤師は担当となった患者の服用情報は全て把握しなければなりません。
かかりつけ医をイメージしてもらうとわかりやすいでしょう。

薬剤師は薬局で薬を処方するだけでなく、患者の自宅に訪問して医療ケアを行います。
また、薬局の営業時間外でも24時間患者からの相談にも対応します。

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かかりつけ薬剤師になるには?

かかりつけ薬剤師は患者を選ぶことはできません。
かかりつけ薬剤師になるためには、患者側から「○○さんを指名したい」との意思表示がなくてはならないのです。

2018年度の調剤報酬改定により、患者に同意書に署名してもらう必要が出てきました。
患者からの同意書署名を経てはじめてかかりつけ薬剤師となり、次の処方時から患者の薬の処方や管理を行うことができるのです。

かかりつけ薬剤師になるための要件は?

かかりつけ薬剤師になるための要件は?

薬剤師の資格があれば、誰でもかかりつけ薬剤師になれるわけではありません。
厚生労働省では、かかりつけ薬剤師になるための資質として「薬や健康、介護のことについて豊富な知識と十分な経験を持ちニーズに合った対応ができる人物であること」と定めています。

そのためには「厚生労働省中央社会保険医療協議会 総会(第328回)」に記載された「薬剤師として3年以上の薬局勤務経験があり、同一の保険薬局に週32時間以上勤務しているとともに、当該保険薬局に半年以上在籍していること」「薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度等の研修認定を取得していること」「医療に係る地域活動の取組に参画していること。(地域の行政機関や関係団体等が主催する講演会、研修会等への参加、講演等の実績)」の要件を全て満たさなくてはなりません。

かかりつけ薬剤師に期待されていることは? 

かかりつけ薬剤師は、地域密着型の包括的な医療ケアの担い手として期待されています。
従来の薬剤師は、患者が受診した病院の門前薬局などで業務を行ってきました。

一方でかかりつけ薬剤師は、患者が地元や遠方などどんな病院で受診したとしても、それぞれの医療機関と連携してあらゆる病院の処方情報の管理を行うことができます。
患者は遠くの病院へ処方せんを貰いに行かなくても、かかりつけ薬剤師に頼れるので、生活や心身にゆとりが生まれます

また、かかりつけ薬剤師は患者の薬の種類や量を一元管理できるため、患者ごとに投薬効果や副作用の有無などを随時確認することもできます。
さらに、患者の服薬状況を把握するかかりつけ薬剤師がいることで、薬の重複処方や過剰処方などの予防にも効果が期待できます。

このように、特定のかかりつけ薬剤師が地域患者の健康管理や薬の管理を多く担うようになれば、地域に密着したきめ細やかな医療ケアが実現できるようになります。

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かかりつけ薬剤師になるメリット

かかりつけ薬剤師になるための要件を満たすのは大変ですが、その分メリットがあります。

付加価値が高まり、給与UP・転職が有利に

まず、薬剤師としての付加価値が高まります。
そのため、転職もしやすくなって給与アップも期待できるでしょう。
なぜなら、薬局側は一人でも多くのかかりつけ薬剤師を雇いたいと考えているからです。

その理由の1つ目は、かかりつけ薬剤師を雇うと、国から「かかりつけ薬剤師指導料」の診療報酬加算があるからです。
診療報酬加算があれば、薬局の収益が上がります。

2つ目の理由は、医療に関わる地域活動に参加しているかかりつけ薬剤師がいることで薬局のイメージが上がるからです。
薬局が乱立する中、地域で生き残るためにはイメージ戦略は大切になります。

3つ目の理由は、薬局で薬を処方する患者が増えるからです。
かかりつけ薬剤師を指名すると、患者は全ての薬の一元管理をしてもらえます。
そのため、重複投薬や相互作用の危険性を防ぐことができるのです。

また、薬局が閉まっている夜間や休日をはじめ在宅での対応も行ってもらえます
特に子供や妊婦がいる家庭では何かあったときに安心です。
患者にとってのメリットが大きくなるため、かかりつけ薬剤師のいる薬局に通いたいと考えるのです。

かかりつけ薬剤師になるデメリット

ただし、デメリットもあります。

24時間対応が必要であり、研修費用がかかる

かかりつけ薬剤師になると、夜間や休日でも薬や健康相談に応じなくてはなりません

また、要件の中にある「研修認定薬剤師」は一度取得すればおしまいではなく、3年ごとに更新する必要があります。
更新するためには研修に参加して30単位以上を取得しなくてはなりません。
さらに、これらの研修の中には参加するためのお金がかかるものもあります。

つまり、かかりつけ薬剤師の要件を満たすには時間とお金がかかるのです。

ちなみに、かかりつけ薬局は患者が指定するため、なるための要件はありません。
ただし、薬局として「24時間対応すること」「在宅医療を行うこと」などが望ましいとされています。

かかりつけ薬剤師の仕事内容

服用している薬の一元管理

かかりつけ薬剤師の主な仕事は、患者が服用している薬の一元管理を行うことです。
病院の門前薬局が乱立している中、患者も複数の薬局で薬を処方してもらう機会が増えてきました。

そのため、患者に対して病院や薬局などが知らないうちに重複投薬や多剤投薬を行ってしまう場合も出てきたのです。
そのようなリスクを防ぐために活躍するのが、かかりつけ薬剤師です。

かかりつけ薬剤師は服用している薬の中に似た成分の薬があれば、医師に相談して適切な薬の量になるように調整します。
飲み合わせの悪い薬がある場合も同様です。

一口に薬と言っても病院から処方された薬だけでなく、市販薬をはじめ患者が日常的に摂取している健康食品やサプリメントなども管理します。

薬の指導・アドバイス

リスクがあるようであれば患者に指導・アドバイスを行います。
さらに、残薬管理や副作用の確認もするのです。

こうしたかかりつけ薬剤師の働きによって、重複投薬をはじめ多剤投薬や相互作用を防ぎ、患者のリスクを減らすことができます。
また、患者の健康状態を保つことは国民医療費を減らすことにも役立ちます。

食生活のアドバイスや運動指導

かかりつけ薬剤師の仕事の範囲は、薬に関することだけに留まりません。
患者の健康を維持するための食生活のアドバイスから運動の指導まで多岐に渡ります。
ときには、摂取したほうがいい健康食品やサプリメントを勧めることもあるのです。

その際、患者に適切なアドバイスをするためには専門用語や知識をわかりやすい言葉に言い換えたり、相手の目線に立って話をしたりするコミュニケーション力が必要になります。

自宅訪問

こうしたかかりつけ薬剤師の仕事は、薬局だけで行うものではありません。
患者の要望によっては自宅に訪問することもあります。
認知症患者や寝たきりの高齢者が増える中、医療機関と連携を取りながら、自宅に出向き薬の管理を行うかかりつけ薬剤師のニーズは高まっているのです。

さらに、薬局の営業時間外である休日や夜間も相談に応じます。
これまでにも妊娠中の女性の薬の副作用をはじめ、子どもの誤飲など夜間でも薬に関する相談が求められていました。

24時間で対応してくれるかかりつけ薬剤師の登場により、患者によりいっそう安心して薬を服用してもらうことができるようになったのです。
その分、かかりつけ薬剤師の負担は増えますが、やりがいのある仕事といえるでしょう。

かかりつけ薬剤師の指導料

かかりつけ薬剤師の業務は薬学管理料として評価されます。
つまり、医師と連携して薬の管理や処方を行い、患者にアドバイスを行うと、かかりつけ薬剤師指導料が発生するのです。

ただし、この指導料が発生するのは患者がかかりつけ薬剤師として指名したときのみです。
患者からの指名がなく、通常の薬剤師業務しか行わない場合には発生しません。

かかりつけ薬剤師指導料の金額は、医療費負担が3割の患者であれば約100円と言われています。

2018年度に行われた調剤報酬改定では、かかりつけ薬剤師指導料の見直しが行われました。
2016年度の調剤報酬改定と比べると、70点から73点に引き上げられたのです。
同時にかかりつけ薬剤師包括管理料も270点から280点に引き上げられ、薬剤師の在籍期間の要件も半年から1年に見直されました。

このほかにも、2018年度の改訂では調剤基本料1の特例除外規定が削除されることになったのです。
そのため、大手チェーンの薬局では調剤基本料を今までのように算定することができなり、大幅に収益が減っているのです。

また、地域支援体制加算の要件でもかかりつけ薬剤師指導料の実績が明らかになりました。
そのため、薬剤師指導料の点数が引き上げられたかかりつけ薬剤師の存在は、ますます大きくなり需要も増しているのです。

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まとめ

まとめ

年々、よりよい医療サービスを提供できるかかりつけ薬剤師のニーズが高まっています。
かかけつけ薬剤師になるためには、高いスキルや経験、専門知識が必要とされます。

しかし、その分、やりがいのある仕事とも言えるでしょう。

自分自身のキャリアアップのためにも、かかりつけ薬剤師として働くことも視野に入れてみるのもいいですね。
また、コミュニケーション力やマナー、話し方など、薬剤師としての魅力をさらにUPさせる新しいスキルを身につけてみるのもいいかもしれません。
この機会に是非新しいキャリアに向けて一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。

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