歯科医院で治療器具の準備や診療介助などの歯科医師のアシスタント業務、受付・会計、カルテの作成、診療報酬明細書(レセプト)の作成業務などの事務業務を行う専門職のことを歯科助手といいます。患者さんと直接コミュニケーションをとる機会が多く、「歯科医院の顔」として頼りにされるお仕事です。
歯科助手と歯科医療事務はどのように違いがあるのでしょう。おおまかに言うと、歯科医療事務は受付や電話対応、カルテの作成、レセプトの作成などの事務業務をメインにしており、診療介助などの歯科医師のアシスタント業務は行わないという違いです。しかし、実際は、歯科医院によっては両者の区別をしていないところも多いため、明確な区別はありません。
歯科医院で厚生労働省が定める診療報酬点数表をもとに、保険者に診察料や薬代を請求するお仕事です。ほとんどの患者さんが、保険(国民健康保険、政府管掌健康保険 etc.)に加入していますので、患者さんの負担は診察料や薬代の一部(3割)になります。残りの料金(7割)は保険者である「国民健康保険」や「保険組合」に請求します。
診療介助とは、歯科医師が患者さんの治療を円滑に行えるよう、治療に必要な器具や環境を整えたり、診察台の脇で歯科医師がする治療をサポートする仕事のことを言います。診療介助は、診療アシストと呼ばれることもあります。歯科助手の仕事のうち、一番医療に携わっていると感じるとてもやりがいのあるお仕事です。一般的な歯科医院での診療介助のお仕事には次のようなものがあります。
◎ライト
◎バキューム
◎治療器具の準備・受け渡し
◎セメント練和
◎印象材練和
◎石膏注ぎ
歯科医院の収入の大部分は、国民一人ひとりの歯科医療費です。次の統計資料(厚生労働省発表)からもわかる通り、国民の歯科医療費は毎年ほぼ横ばいと非常に安定しています。
また、矯正や審美歯科への興味の高まりとともに、歯科医院の件数も急増中。歯科助手の求人数も、比例するように増加しています。歯科助手のお仕事は、歯科医院の収入に深くかかわる役割を担っていますので、今後ますます重宝されることは間違いありません。特に患者さんの数も多くなっている昨今では歯科助手のニーズは非常に高く、即戦力となる資格者は強く求められています。
歯科医院は日本全国どこにでもあり、その数は6.8万箇所以上とコンビニエンスストアの数を超えています。そのため、転勤などで引っ越すことになっても仕事に困ることはありません。また、歯科助手の就業形態は正社員・派遣社員・パートなど、選択肢が多く、年齢制限がないのも特徴です。毎日フルタイムで働きたい人、育児中なので時間を限定して働きたい人など、自分の生活スタイルに合わせて選ぶことができるところも人気の秘密となっています。
日本は典型的な少子高齢化社会となっています。65歳以上の人口が総人口の何割を占めているかによって、高齢化社会は3種類に分類されていますが、日本はその中でも最も高齢者人口率の高い超高齢化社会(高齢化率21%以上)に認定されています。2055年には高齢化率が約40%にまで増加するのではないかとも推測されています。
高齢化が進むにつれ、歯科医療費はどんどん増え、さらに入れ歯などを必要とする患者さんの数も増えていきます。また、医療業界は不況に左右されにくい業界とも言われています。虫歯や歯周病などの治療は景気に関係なく発生するものだからです。こうした点からも医療業界に属する歯科助手という仕事も安定した仕事だと言えるでしょう。歯科医師が自分の仕事に専念できるよう、事務や経理、診療介助を行う優秀な歯科助手の人材は、今後さらに社会において必要とされる職業となっていくでしょう。
歯科業界には、「4つの手による歯科診療」という言葉があります。これは、歯科医師の2本の手と歯科助手の2本の手があって、初めて的確な診療が行えるということが由来となっている言葉です。歯科医師の「頼れるアシスタント」として患者さんに対応するという診療介助は、社会的に見ても非常に意義のある仕事だと、日々やりがいを実感できるでしょう。また、患者さんからの「ありがとう」というお礼の言葉や現場スタッフからの「お疲れさま」というねぎらいの言葉は、あなたの存在価値を高め、ますます歯科助手の仕事に誇りを持てるようになるでしょう。そして、歯科助手は年齢制限もなく、その時のライフスタイルに合わせながら、長く続けられる仕事です。そんな魅力的な歯科助手の資格はあなたの生涯の武器となるでしょう。